セラピストなのに、「治そうとしない」
少し不思議に聞こえるかもしれません。
人を癒す仕事なのに、治さないなんて、どういうことだろう。
むしろ、治してあげることが
セラピストの役割だと思っている人のほうが多いかもしれません。
でも実は、この「治そうとする気持ち」が、
セラピストの本質と、ズレてしまっているとしたらどうでしょう?
この、小さく感じるかもしれないズレが、
やがて、クライアントとの大きな歪みになっていくんです。
「治してあげたい」と思うのは、悪いことですか?
まず最初に、ひとつ、お伝えしたい大切なことがあります。
それは、「治してあげたい」と思う気持ち自体は、
決して悪いものではない、ということです。
むしろそれは、相手を大切に思っているからこそ生まれる、
とても自然で、優しい感情です。
目の前の人がつらそうにしていたら、なんとかしてあげたいと思う。
これは、人としてとても健全な、当たり前の反応です。
だからこそ、その素敵な気持ちを否定する必要はありません。
ただ——その“関わり方”が、本当に相手のためになっているのかどうか。
そこは、一度立ち止まって考えてみてもいいのかもしれません。
「治そうとすること」に違和感が生まれる理由
セラピストとして経験を重ねていくと、
少しずつ気づいていくことがあります。
それは、「自分が治しているわけではない」という感覚です。
どれだけ丁寧にトリートメントをしても、
どれだけしっかりカウンセリングをしても、
実際に身体がゆるみ、心が軽くなっていくのは、
その人自身の中で起きている変化です。
私たちがやっているのは、何かを“与えている”というよりも、
その人が本来持っている力が発揮されるように、
環境を整えている、ということに近いのかもしれません。
そう考えたときに、「自分が治している」という前提には、
違和感が生まれてくるのではないでしょうか。
正解を与える関係は、長く続かない
「こうすれば良くなりますよ」
「これをやってください」
セラピストとして、そう伝えたくなる場面はたくさんあります。
そして実際に、その場では喜ばれることもあります。
ですが、この関係性には、ひとつだけ注意点があります。
それは、相手が“受け身”になってしまうことです。
正解を与え続ける関係は、一見すると親切で、優しいものに見えます。
でも少しずつ、
「どうしたらいいですか?」
「何をすればいいですか?」
と、判断を委ねる関係になっていきます。
それは、信頼関係のようでいて、
実は“依存”に近い状態になることもあるのです。
「治してもらう関係」が生む、もう一つのリスク
ここで、もう一歩だけ踏み込んでみます。
もしセラピストが、「自分が治している」と感じてしまったとしたら。
そしてクライアントが、「この人が治してくれる」と思い始めたとしたら。
その関係は、一見とても強い信頼関係に見えます。
ですが実は、とても不安定なバランスの上に成り立っています。
なぜなら、人は本来、誰かに“治してもらう”存在ではないからです。
セラピストもまた、一人の人間です。
どれだけ経験を積んでも、どれだけ技術を磨いても、
すべてを変えられるわけではありません。
それでも期待され続けると、
応えようとして無理をしてしまうことがあります。
そしていつか、その期待に応えられなくなったとき、
関係は簡単に崩れてしまうこともあります。
一時的な信頼のように見えていたものが、
実は“依存”だったと気づく瞬間です。
これは、特別な話ではありません。
長くこの仕事をしていると、誰にでも起こり得ることです。
セラピストの役割は“治すこと”ではない
では、セラピストの役割は何なのでしょうか。
それは、治すことではなく、
「整うためのサポートをすること。」
だと、私は考えています。
人の身体は本来、バランスを取り戻そうとする力を持っています。
心も同じで、安心できる環境の中では、
自然と落ち着きを取り戻していきます。
つまり、変化は外から与えられるものではなく、
その人の中から起きているものです。
私たちセラピストは、
その人が安心して本来の状態に戻っていけるように、
空間を整え、時間をつくり、関わり方を選んでいく。
それが、この仕事の本質なのかもしれません。
“その人の力を信じる”という関わり方
ここで大切になるのが、その人の力を信じることです。
「この人は、自分で整っていける力を持っている」そう信じて関わるのか、
それとも「自分がなんとかしてあげなければいけない」と思って関わるのか。
この違いは、とても大きなものです。
前者の関わり方は、相手を尊重し、対等な関係を生みます。
後者の関わり方は、無意識のうちに上下関係をつくってしまいます。
どちらが正しいというよりも、どんな関係性を築いていきたいのか。
そこが問われているのかもしれません。
人の人生を背負わないという選択
セラピストという仕事は、とてもやりがいのある仕事です。
だからこそ、
「この人を変えてあげたい」
「もっと良くしてあげたい」
そう思うこともあるかもしれません。
でも、人の人生を変えることは、本来、その人にしかできないことです。
セラピストができるのは、
その人が自分の人生と向き合う時間に、寄り添い、支えること。
それ以上でも、それ以下でもありません。
それは冷たいことではなく、
むしろ、相手の人生を尊重する関わり方なのだと思います。
セラピストとしての関わり方を選ぶのもあなた
ここまで読んでみて、どんなふうに感じたでしょうか。
セラピストという仕事を、
「少し難しいな」と感じた方もいるかもしれません。
「でも、なんとなく分かる気がする」
そう思った方もいるかもしれません。
それは、どちらが正しいということではありません。
ただ、セラピストという仕事にも、いろいろな関わり方があります。
もしあなたが、「人を変えたい」のではなく、
「人と向き合いたい」そう感じるのであれば、
この仕事は、きっとあなたにとって、
とても意味のあるものになると思います。
もしこの記事を読んで、
「セラピストという仕事、気になるかも」
そんなふうに感じた方がいたら、
その感覚を、大切にしてみてください。
最初から、「自分にできるかどうか」や
「向いているかどうか」を決めなくても大丈夫です。
セラピスト向上委員会の
リラクゼーションセラピスト養成講座では、
技術だけではなく、
・人と向き合う関わり方
・信頼関係の築き方
・セラピストとしての在り方
そういったことも含めて、ひとつずつ学んでいきます。
ここは、誰かに変えてもらう場所ではありません。
でも、自分の可能性を信じて、少しずつ前に進んでいきたい人にとっては、
きっと意味のある時間になると思います。
もしよければ、講座の内容も一度のぞいてみてください。
